【社会学部の教授から学ぶ!】グローバル化する社会で外国人労働者とどう共存する?

2021年4月13日キャリア

みなさんこんにちは。
大学生のみなさんは絶賛春休み中でしょうか?
新学期が近づくこの季節、履修登録をされる学生も多いのではないでしょうか?半年間の自分の学びの指針を決定する前に、春休みの時間を活用して、これまで触れてこなかった分野に触れてみませんか?
今回はガクチカチームが、外国人労働者についての研究に長年携わられている、東京都立大学の丹野清人先生に取材させていただきました。

丹野清人教授
1966年生まれ。専門は移民、外国人労働者。東京都立大学人文社会学部社会学教室教授。著書に『越境する雇用システムと外国人労働者』(東京大学出版会)、『国籍の境界を考える』『「外国人の人権」の社会学』(ともに吉田書店)など。

外国人労働者の現状について

初めまして!ガクチカ 取材チームの須賀田と申します。本日はよろしくお願いします。早速ですが質問させてください。先生は外国人労働者についての研究にご尽力されていると思うのですが、この分野に取り組むようになったきっかけはどこにあったのでしょうか?

初めまして。本日はよろしくお願いします。

初めて外国人労働者関連のことに興味をもったのは学生の時でした。私はちょうどバブル経済の時期に学生を経験したのですが、日本の国際化がすごく進んだのがこの時期になります。その当時は週末になると、上野公園や代々木公園に何万人という単位で、西アジアや南アジアそして東南アジアの方々が集まっていました。平日はなんともない普通の公園なのに、週末になるとこれだけ人が集まってくるというところに、初めは興味をもちました。

上野公園や代々木公園にそんな歴史があったことを初めて知りました!今とは全く違った景色が広がっていたのですね。外国人労働者数の推移を見た時、近年もじわじわと増え続けているなという印象をもったのですが、この推移は先生の目にはどのように映っているのでしょうか?


外国人労働者数の推移

厚生労働省『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ』2019年10月

近年外国人労働者は間違いなく増えていますね。ただコロナウイルスの流行が始まる前から増加のスピードは少し減速の傾向がありました。アベノミクスが始まって3、4年は急速に増えていましたが、それに比べれば今は少し落ち着いてきています。

コロナウイルスの影響で経営難だったり財務状況の悪化というようなニュースをよく目にするのですが、外国人労働者にも影響は出ているのでしょうか?

コロナウイルスの影響で帰れなくなってしまった技能実習生の問題が出てきていたり、影響がゼロであるということは無いと思います。

一方でリーマンショックの時にはもっと大きな問題が起きていました。ブラジルや、ペルーから来た日系人など、派遣業者から送り込まれた外国人労働者達がいましたが、いわゆる「派遣切り」が始まった時に一番最初に切られてしまうのは、彼らのような外国人労働者たちでした。その人たちが集住していた岡崎、浜松、豊田などのハローワークには、建物の周りがヒトの鎖でぐるぐるになるほど人が集まっていたんです。その時は、厚生労働省の事業として、失業した日系人の帰国支援を行なっていました。労働者には1人最大30万円、扶養家族についても1人最大20万円で送り返していたんです。

コロナ禍の今も経済危機であることに変わりはないと思いますが、リーマンショックの時のように、ハローワークの周りに人の鎖ができているなんてことはありませんよね。そう考えると、経済危機に陥っている割には、コントロールできているというのが現状ではないかと思います。

リーマンショック当時の状況とコロナ禍で違いが出てきているのはなぜでしょうか?

10年前は社会福祉制度の中に外国人が含まれないというような状況があったため、セーフティーネットがない状態で解雇されてしまう外国人労働者達がたくさんいました。

一方で現在は、持続化給付金や、その他の雇用に関する補助金が国籍に関係なく支払われるという仕組みになってきています。これによって外国人の雇用がキープされているし、さらに万が一解雇されてしまったとしても最低限の支援を受けることができるという仕組みが働いています。

外国人労働者受け入れのこれからについて

ここまで先生に外国人労働者の現状を教えていただきましたが、続いて外国人労働者受け入れのこれからについてのお話をお伺いしたいと思います。まずはじめに、日本が外国人労働者を受け入れることの重要性について教えてください。

人手不足で働き手がいないという現状を打破するためには、外国人労働者の受け入れが非常に重要だと思います。

ただ、難しいのが、どこまで日本が外国人労働者を呼びたいと思っているのかというところですね。今の仕組みの中では、外国人が日本に来て幸せになるということはすごく確率の低く、難しいことだと思います。

日本は、低位労働者を呼ぶことには熱心ですが、ミドル~ハイについての制度が用意されていません。日本には、高度人材というビザがありますが、このビザは、条件次第で日本の新卒社員の年収程度の外国人でも取得可能なビザです。それに比べて、アメリカのH-1B(特殊技能職ビザ)は、それこそ年収が数千万円もの、文字通り高度な人材しか取得することができないビザです。日本の意味する高度人材と、グローバルの意味する高度人材が大きくかけ離れているということがわかります。このような制度ではハイレベルな外国人に日本で働きたいと思ってもらうのはなかなか難しいというのが現状ではないでしょうか。

ありがとうございます。日本の基準とグローバルの基準が大きくかけ離れているということを初めて知りました。
低位労働者と高度人材の獲得は両輪どちらも注力していく必要があるのでしょうか?それともこれからの日本を考えたときに、どちらかに注力した方が良かったりするのでしょうか?

答えとしてはどちらもありですね。国として低位の労働者しか入れないという政策を取るところもあるし、実現も可能です。

現在ある技能実習生の制度では、家族帯同の自由がなく、原則として一定の期間で送り返す仕組みになっています。必要な労働力だけを獲得し、将来住み続ける人を作らないという点では理にかなっている制度です。
しかし、この制度は日本と労働力供給国の圧倒的経済格差がないと成り立たない仕組みです。技能実習生達は短い期間で、自国では得られない額を稼ぐことができるから日本に来ているのです。

日本の経済成長が停滞している間に、労働力供給国はどんどん急成長しています。今は安い労働力を受け入れるということができているかもしれませんが、それを長期間続けるためには、圧倒的な経済格差を維持できるという前提がないといけませんよね。

低位労働者の受け入れだけに注力するのであれば、日本が経済格差を維持できるだけのパワーをもっているのか?ということには向き合わないといけませんね。

日本の技術力は世界一だなんてよく言われている時代もありましたが、近年では他の国々の発展もめざましく、状況も変わってきているように思えます。少子高齢化も進み、労働力が減少していってしまうことも考えるとこれからの日本が心配になってきてしまいました…。どうするのが最善なのでしょうか。

それはみなさんと一緒にこれから考えていきたいなと思います。
一つの観点から言えば、近年製造業は、輸出型産業を辞めて、現地の工場で生産から供給までを終える形になってきていますよね。グローバル経営が進み、海外の現地法人で雇用している人の方が日本で雇用している人数よりも圧倒的に多くなるような会社が増えてきています。このような動きが進む現代において、外国人労働者を正社員として雇用し、日本の本社と各国間をつなぐ、橋渡し人財として活躍してもらうことなどが重要になってくるのではないでしょうか。グローバル人材として活用していかないともったいないですよね。

外国人労働者との共存について

ここまで先生に外国人労働者受け入れのこれからについてお話をお伺いしてきました。最後にこれから私たちが、外国人労働者と共存していくために個人として何が必要なのかを教えていただきたいです。

重要なことはせっかちにならないということですね。せっかちとはすぐに理解できると思ってしまうことです。人種が多くなると、価値観も多様化していきます。アメリカやラテンアメリカなど多くの人種が共存している国では、分かり合えるということが前提ではないのです。分かり合えないことを前提にコミュニケーションをきちんととり、自分がどこまでわかっているのか、また伝えたいことがどこまで伝わっているのかを都度確認することが非常に重要です。二言三言では伝わらないのは当たり前です。伝わらないときに逃げてしまうのではなく、恥ずかしがらずに伝える、伝わるまで伝えることが非常に大事だなと思います。

先生のおっしゃる通りですね。自分自身も大学で留学生と一緒に英語で授業を受ける時など、なんとなく発音などが不安で、途中でコミュニケーションを諦めてしまうことが多々ありました。私と同じような経験をした大学生も多いのではないかと思います。

確かにアメリカ人の話す英語は綺麗に聞こえますが、どの国の人が英語を喋っても訛りはあります。日本だけではありません。インドやフィリピンの方が話す英語にも訛りはありますが、臆せずとにかく話しまくる方が多い印象です。「声を張って、しっかりとコミュニケーションをとる」その姿勢こそ私たちが鏡とすべきものですね。目指すのはきれいな英語じゃなくて、図々しい英語です。

これからは図々しい英語を目指して、臆さずどんどんコミュニケーションをとっていきたいと思います!

また、それぞれの国の言葉の中に差別用語というものがどうしてもあります。なのでどの言葉が差別に当たるか知っておく必要があると思います。同じ言葉でも国によって、差別になったり、ならなかったりする言葉があります。他にも同じ意味の言葉でも、差別用語になるものとならないものがあったりもします。お互いに多様性を受け入れ、それぞれのアイデンティティとして、プライドをもって会話をする。そんな姿勢が大切なのではないかと思います。

ありがとうございます!グローバル化が進む社会だからこそ、相手の文化や言語を知り、互いに尊敬し合うということは非常に重要ですね。
最後に先生からこれからの未来を生きる若者にメッセージをいただきたいです。

今の時代は、どうしてもコロナウイルスの影響もあり、人とのつながりや社会とのつながりを経験することが難しい状況であると思っています。しかし、やはり重要なのは他者とつながることです。一人になることにプライドをもつのではなく、人とつながり社会と接することに、価値とプライドをもつような価値観を大事にして欲しいなと思います。

また、日本の経済が縮小するほど、国内に留まっていては活路を見出すことが難しい世の中になっていきます。外に出て行くことはもちろん心配も多いですが、人が生きているところはどんな社会でも生きていけます。どんどん外に出て行って、行った先の場所で周りをみて行動するということをぜひ経験してもらいたいです。

ちなみに私はこれまで年に2回はブラジルに行っていましたが、合計で3回も強盗にあってます。財布も取られたことがあるし、羽交い締め強盗にあうこともありました。それでもまたブラジルに行きたいと思うんです。

強盗にあった時、この道は少し危険そうかな?と感じました。ただその時はその先で人と会う約束があり、行かなければならなかったため行きました。逆に言えば、周りをよく見ていれば、危険は避けようと思えば避けることができるということです。

ぜひ皆さんには危険は避けつつ、周りに注意をしながら、人と関わりをもってほしいです。つながるのは楽しいです。エンジョイしてください!

ありがとうございました!
大学生の皆さんはこれから新学期が始まりますね。
実りある学生生活となるように、丹野先生のお言葉を胸に、果敢に外へ飛び出していきましょう!

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2021年4月13日キャリア

編集担当者 ガクチカ編集部