「2020年卒新卒学生の入社後追跡調査 」から見る、就活を行う学生と企業にとって重要な勤続志向と適職意識

キャリア,コロナとガクチカ

「3年3割」

みなさん、上記の言い回しを聞いたことありますか?

「3年3割」というのは、新卒者のうち3割が、3年で離職することを指します。

今回の記事では2021年3月25日に、公益社団法人全国求人情報協会からリリースされた「2020年卒新卒者の入社後追跡調査」について、佐藤 博樹 中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)教授に取材しました。

これから入社する新卒者とって、また、現在就職活動中、これから就職活動を行うという学生にとっても納得した就職活動を行うための有益な記事となっていますので、ぜひ、ご一読ください。

佐藤 博樹 中央大学大学院戦略経営研究科(ビジネススクール)教授
公益社団法人全国求人情報協会 理事

東京生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。雇用職業総合研究所(現、労働政策研究・研修機構)研究員、法政大学経営学部教授、東京大学社会科学研究所教授などを経て、現職。東京大学名誉教授。著書として、『人事管理入門(第3版)』(共著),『新しい人事労務管理(第6版)』(共著)、『新訂・介護離職から社員を守る』(共著)、『働き方改革の基本』(共著)など。
兼職として、内閣府・男女共同参画会議議員や民間企業の共同研究である「ワーク・ライフ・バランス&多様性推進・研究プロジェクト」共同代表など。

「2020年卒新卒者の入社後追跡調査」とは?

「2020年卒新卒者の入社後追跡調査」は、公益社団法人全国求人情報協会の「新卒等若年雇用部会」が、2020年卒新卒者を対象として、第1回調査(入社前:2020年3月)および第2回調査(入社約半年後:2020年10月~2020年11月)を実施し、新卒入社者の入社時及び入社約半年後の就業意識の実態をまとめたものです。

調査の背景は、新卒者の3割が入社後3年で離職する実態を正しく捉え、よりよい入社のあり方を見出そうというものです。そのために、入社後約半年時点の就業意向や、入社後の仕事経験・勤務実態を調査しているのです。

この調査では、学生と、企業にそれぞれ以下の観点が見えるような調査となっています。

・学生にとっては、勤続志向をもつ、働き続けたいと思える企業を見つけ出すには、どんな情報を集めたら良いのかを示しました。

・企業にとっては、学生に勤続志向をもってもらう、もち続けてもらうにはどういった情報の提供をするべきなのか、またどのような環境づくりに注力すべきなのかを示唆しています。

今回の調査で上記の観点を学生と企業にそれぞれ示すことで、新卒入社者の離職を最小限に抑えることを目的としています。

勤続志向がなぜ大事なのか

入社前にすでに転職志向を持っていた学生も少なくなく(20.7%),こうした学生では入社後も転職志向・離職となる割合(56.6%)が高くなるという調査結果が得られました。

そのため、企業としては入社前に勤続志向をもつ学生を増やすことが新卒採用担当者のミッションになります。

学生の視点で言えば、入社が決まっている会社に初めから転職志向をもって入社することは、あまりいいとは言えません。転職すること自体が良くないというわけではありません。しかし、当面は勤め続ける意向がある企業に入社するのが学生にとっては最適です。

ここで入社前の新卒者への調査結果と、入社後約半年後の新卒者への調査結果を見てみると入社前に勤続意向を持つ新卒者のうち、74.0%が半年後も勤続意向をもつという結果が調査からわかっています。

入社前調査で転職志向をもつ学生の入社後調査を見てみると、入社前に転職志向をもっていた新卒者のうち、56.6%が入社約半年後も転職志向をもち続けている、もしくは既に離職しているという調査結果が出ています。

この結果から、学生にとっても入社前に就職予定先の企業への勤続志向をもっておくことが重要になります。

入社前に勤続志向を醸成するためにはどのように就職活動を行うことが必要でしょうか

数値で示されているもの以外に、経営ビジョンや初年度どんな業務に携わることができるのか、配属場所はどこなのか、有給休暇の取得率はどうなのかなどの情報を得ることが大事です。

数値で示されている企業のデータは誰でも企業研究すれば容易に得ることができます。しかし、企業の定性的なデータは、その企業で働く人にしかわかりません。

そのため、面接で会う人や、OB/OGに話を聞いて数量化できない情報をできるだけ集めるということが大事になります。

入社先企業の経営ビジョン、配属場所、有給休暇取得率、育成環境等、企業の定性的な面まで理解し、入社して独り立ちするまでどんな道を辿るのか、明確に理解することが必要になります。

入社後に勤続志向を持ち続けるために、新卒者はどのような意識をもつと良いのでしょうか

入社後の就業意識変化に注目してみましょう。

(上図参照)入社前に勤続志向であったうち、入社後に「自分はこの会社で仕事をするのに向いていそうだと感じた」人の95.4%は、入社後も勤続志向となる調査結果が出ています。一方、入社

前に勤続志向であったうち、入社後に「自分はこの会社で向いていないと感じた」人の64.6%は、入社後に転職志向または離職に転じていました。

次に、(下図参照)入社前に転職志向であった新卒者の場合、入社後に「自分はこの会社で仕事をするのに向いていそうだと感じた」人の59.8%は、勤続志向に転じていました。一方、入社前に転職志向であったうち、「自分はこの会社で向いていないと感じた」人の91.5%は、入社後も転職志向のまま、もしくは離職していた。

つまり、「適職意識」(「自分はこの会社で仕事をするのに向いていそうだと感じた」)を持てるか否かが、入社後も勤続志向を持ち続けたり、入社後に勤続志向に転じたりすることにつながると言えます。

適職意識とはどのように醸成されるのでしょうか

適職意識が醸成される入社後の仕事環境について分析を行うことで、どのように適職意識が醸成されるのかを明らかにしました。

入社後における指導担当の有無別に、適職意識についての回答結果(上図参照)を見てみましょう。指導担当がいる(いた)人では、39.6%が「自分はこの会社で仕事をするのに向いていそうだと感じた」と回答しています。逆に指導担当がいない(いなかった)人では、同じ項目の回答率は20.9%でした。

また、指導担当がいるうち、自分から「担当業務のこと以外も含めて相談している(していた)」人は、50.8%が適職意識を持っていた(上図参照)。「担当業務についてのみ相談している(していた)」人では32.2%、「自分から相談することはない(なかった)」人では9.9%でした。

要するに、指導担当に業務以外のことも相談している人の約半数が、適職意識をもっているという結果が出ました。

他にも、入社企業に、「互いに助け合う雰囲気がある」「先輩が後輩を指導する雰囲気がある」「将来の仕事について相談できる」と感じた人の半数以上が、適職意識を持っています。

学生は、上記のようないわゆる組織風土、定性的な面を情報として取りにいくことをオススメします。

新卒者の約6割が経験することになったテレワーク/在宅勤務であっても、テレワーク/在宅勤務中に、自分への評価の言葉をかけられたり、上司や指導担当への報告・連絡・相談の機会が十分だったと感じている人は、適職意識を持っているというデータが得られました。

今回の調査を踏まえて学生へのアドバイスをお願いします

適職意識の調査結果は、職場の環境を分析した上での結果ですが、在宅勤務、出勤勤務にかかわらず、社内コミュニケーションが良好であることが適職意識醸成につながっています。

入社後、自ら積極的にコミュニケーションを取りに行くことは適職意識醸成につながり勤続志向を持ち続けることになります。

そして、コミュニケーションは入社後だけでなく、入社前も重要になります。担当のメンターとコンタクトをとって、社外からはわからない、定性的な情報を取りに行くことが大事になります。

また、話を聞くだけではわからない、入ってみないとわからない情報がたくさんあります。インターンシップでも短期のものでは、内情はわかりません。短くても2週間から1ヶ月ほどのインターンシップに参加するということであれば、定性的な情報を取りにいく上で良い手段だと思います。

しかし、残念ながら上記のような情報収集をしても入社する企業の100パーセントを知ることは不可能です。入社する前後でギャップが生じるのは当たり前だと考えることも重要だと思います。

それは、入社してから企業体制が変わることもあるからです。未来を完全に予測できる人はいません。

例えば現在は、在宅勤務を推奨している企業が多くあります。実際に2020年卒新卒者も約6割が在宅勤務を経験しています。しかし、今後コロナウイルスが収束した後、出勤勤務に振り切ろうとする会社もあるかもしれません。

未来は予測できませんが、予測するための一つの指標として、「経営トップ層の考え方」が挙げられます。

在宅勤務か出勤勤務かの話であれば、出勤をノーマルに考えているか、在宅をノーマルに考えているのかが今後の働き方を左右することになるでしょう。

コロナウイルスの影響以外でも今後緊急事態が発生するかもしれません。その際、多様な働き方に関する眼差し、ライフステージに合わせた働き方、副業、どれだけ社員に合わせて変化しようとしているのかという点は、将来を予測する指標になります。

ぜひ、経営のトップ層の考え、ビジョンとあなたが共感できるのかは確認してみてください。

最後に、就職活動をする上で学生は第一志望群の企業に入社が決まることがベストだとは思います。それでも、当然のことながら就職活動をする多くの学生が第一志望群の企業に行けるわけではありません。第二志望群の企業からしか内定をもらえなかったということもあるでしょう。

それでも自分が気持ちよく働くために、働き続けたいと思える企業に出会うために就職活動中の情報収集を怠らないでください。

最後に

ここまでお付き合いいただきありがとうございます。

今回の取材で「3年3割」という言い回しが消えるには、企業と学生の双方の努力が不可欠に思えました。お互いの正しい理解を得るための行動とお互いの情報開示が必要です。

学生であれば、情報を取りにいくこと、そして正しく自分を理解して自分の求める条件を開示することが大事になります。

その行動に必ず答えてくれる企業があるはずです。ぜひ自分からアクションをしてみましょう。

調査結果リリース元:公益社団法人 全国求人情報協会

出典元のデータ、調査内容こちらから:2020年卒 新卒者の入社後追跡調査、テレワーク実態調査をリリースしました

就職活動に対して不安がある方はこちらもチェック

【コロナ禍の就活が不安な人必見!】就活の専門家に聞いたコロナ禍の就活の特徴と対策

【コミュニケーションのプロに聞く】コロナ禍の学生生活とキャリア設計の薦め

\ガクチカの最新情報・イベント情報を受け取ろう/

キャリア,コロナとガクチカ

編集担当者 tsukasa-watanabe