【ガクチカが何もない!?】コロナ禍における就活を専門家が徹底解説

2021年6月17日キャリア,コロナとガクチカ

新型コロナウイルス感染症の流行により、学生時代に力を入れたこと「ガクチカ」がないと悩む学生が増えています。一方で実はしっかりと振り返ってみると、派手な経験ではなくても、自分なりのこだわりをもって取り組んだことや、自分だからできたことのエピソードをもっている学生は少なくないのではないでしょうか。

今回はキャリアの専門家に、近年の就活市場の事情も交えて、ガクチカの見つけかたをお伺いしてきました。

常見陽平 准教授
千葉商科大学国際教養学部准教授/いしかわUIターン応援団長/働き方評論家
北海道札幌市出身。一橋大学商学部卒業、同大学大学院社会学研究科修士課程修了(社会学修士)。リクルート、バンダイ、ベンチャー企業、フリーランス活動を経て2015年4月より千葉商科大学国際教養学部専任講師(現:准教授)。専攻は労働社会学。大学生の就職活動、労使関係、労働問題、キャリア論、若者論を中心に、執筆・講演など幅広く活動中。

求人が減った?コロナ禍の就活市場の情報を徹底解説

–本日はよろしくお願いします。常見准教授は、働き方全般に関する研究をされていると思うのですが、最近の就職市場にはどのような動きがあるのでしょうか?

就職事情に関しては、新型コロナウイルスショックによる影響が大きいと見ています。一方で、大きな変化といいつつも、その変化はコロナ禍になる前から指摘されていたことでもあると思っています。就職活動に限らず、私はコロナウイルスによって、もともと進んでいた変化が決定的になった という表現が正しいと思っています。

就職活動に関しては、就職活動のやり方がコロナショックによって大きく変化したと考えています。

まずやり方に関しては、何かしらの形で、オンラインでの接触がある就職活動へと変化したと思います。例えば、企業の説明会や面接など、オンラインでの接点が増えたことが一つの論点だと思います。

加えて、就職活動の時期に関しても、コロナ禍への考慮や近年の通年採用に向けての動きなどを理由に、長い期間をかけて選考活動を行う企業が増加しました。

–ありがとうございます。ニュースなどでコロナウイルスによって求人数が減っているということをよく目にするのですが、求人数という側面でもコロナ禍特有の変化というものはあるのでしょうか?

求人数が減ったのは事実ですが、以前より求人倍率がやや悪化したという表現が正しいと思います。

当時の調査の仕方に問題があったということも考慮する必要がありますが、リーマンショックが起きた時はリクルートワークス研究所が毎年、発表している「大卒求人倍率調査」において同指標が1.2倍台で推移しました。

この春に卒業した21年卒の代も、現在就職活動を行っている22卒の代も、この大卒求人倍率は1.5倍台です。2020年卒は1.83倍だったので、減ったことはたしかですが、リーマンショック後ほどは悪化しませんでした。

加えて、業種によって求人倍率にメリハリがあるということも大事な事実だと思います。例えば、観光関連の業界などは現在求人が減っていますが、IT関連の求人など分野によっては増えているところもあります。その結果、ITの技術を持っている人にとっては、売り手市場だと言っていい状況です

さらに興味深いことに、このような局面では、安定や安全を求める学生が増え、大手企業を志望する学生が増えたということも見逃せないデータだと思います。

大きく形を変える就活のあり方。学生側・企業側双方から見た変化とは?

–ここまで就職市場の変化を教えていただきましたが、変化が起こることにより新たに生まれた課題にはどんなものがあるのでしょうか?

企業も学生も、オンライン就活、ICTを活用した就活にどこまで対応できるかということが一つ課題としてあげられると思います。

コロナウイルスの流行とともにオンライン面接が広く普及し始めたので、現在就活をしている22卒の代で事実上2期目ぐらいの段階ですよね。学生も人事もまだまだ慣れていない方がいらっしゃるということも事実だと思います。

意外に思われる方も多いと思いますが、実はインターネットを用いた就活というものが始まってからもう四半世紀ぐらいがたちます。大学にきた求人票を確認したり、企業のカタログを見てハガキで応募するという形だった一方的な就職活動を双方向型の就職活動に変えていこうというところから、インターネットを用いた就活というものが始まっています。

近頃では、売り手市場になる時があったり、IT人材に関して特別待遇を用意していたりという状況もあります。しかし日本の採用活動は、求職者と企業がまだまだ対等の関係になれていないと感じています。あらゆる情報が世に出る時代だからこそ、より、一対一で向き合って、双方向で確かめ合うものになるといいなと思ってます。

–ありがとうございます。企業側、学生側ともにこのコロナ禍で生まれた新たな課題について教えていただきましたが、学生側に特有の課題としてはどのようなものがあるのでしょうか?

リアルな接点が減ってしまったということが一つ課題としてあげられると思います。

近年オンライン就活が急速に広まっていますが、十数年前から一定数がオンライン就活を熱望していました。なぜなら、地方から都内に就職活動に来る場合、交通費がかかったり、例え都心に住んでいたとしても、就職活動のために授業を抜けないといけなかったりと就職活動をすることで、普段の生活に制約がかかってしまような場面があったからです。

実際にオンライン就活が普及したことによって、講義と講義の間に面接や会社説明会に参加することができるようになりましたよね。一方でリアルな接点が減ってしまいました。

コロナ禍では学生が大学に来ることが難しくなってきています。だからこそリアルな接点が減ってしまい、周りから刺激を受けたり、サポートしてもらったりする機会が少なくなっています。

例えば、今までであれば、周囲の友達が髪の毛を黒く染めたり、リクルートスーツを買ったりしているのを見て「自分もそろそろ就活始めないと」と思う人が少なくなかったと思います。

また、私は大学のキャリア委員会の一員として、学生の就活をフォローするというミッションも背負っていますが、学生が大学にいないので、困っている学生に気づけなかったり、接点を持ちにくくなっています。

周りに一緒に頑張る仲間がいるということは就活生にとってかなりの良い効果があることだと思います。新卒の一括採用は不要ではないかという主張がありますが、一概に一括採用が問題であるわけではなく、このコロナ禍で一括採用の良い部分も明らかになったのではないかと思います。

–就職活動がオンラインに移行することで、効率的に就職活動を進めることができるようになった一方で、就活生の孤立化が進んでしまっているという一面もあるのですね。このような現状の中で、学生はどのように自分にマッチする企業を探せば良いのでしょうか。

自分にマッチする企業について気づいて欲しいと思います。隠れた優良企業にも気づいてもらいたいです。

その企業がどんな会社なのかを知るための要素はいくつかありますが、その要素の掛け合わせで考えてもらいたいです。

基本的にはまず、その企業の強みを知ることが大切です。「どの事業のシェアが高いか」や「どの技術に定評があるか」などその企業の特徴そのものを見てください。

次に、具体的に若手社員にはどのような仕事が任されているのかを見てください。

「とにかく経営者が魅力的だからその会社に入りたい」というような考え方をする学生もいると思いますが、経営者の語る理想と現場の現実にギャップがあることも少なくありません。

入社後に、「こんなはずではなかった」と思わないようにするためにも、仕事の中身はしっかり確認しましょう。

加えて大切なのが組織風土です。その企業が何を良しとしているのかを見てください。例えば、ある会社では慎重に、丁寧に物事を積み重ねることが評価され、また他のある会社ではとにかく行動をすることが評価されるということがありますよね。その企業が何を大切にしてるのか、何を意識してるのかを見てください。

最後に、待遇もしっかりと確認しておくべきだと考えています。実際社員の話を聞かないと分からなかったり、データを見ないとわからなかったりする部分ではあると思うのですが、平均年収という指標だけでなく、例えば福利厚生やボーナスなども見ておくべきだと思います。給与がそこまで多くない会社であったとしても、会社が用意した物件に安く済むことができたり、住宅手当が出たりする場合、支出と合わせて考えると手元に残るお金が多かったりすることもあります。

–一般的に言われている優良企業だけを見るのではなく、様々な要素を掛け合わせて自分にマッチする企業を見つけることが大切なのですね。ここまで就職活動について教えていただきましたが、働く環境にも変化は生まれているのでしょうか?

今後、全面的にテレワークになるかどうかはわかりませんが、今の学生たちは、10年後くらいにはいつでもどこでも誰とでも働く社会になっていくと思います。

誰とでもという観点では、もう実現してきていてる部分もあります。今は正社員に加えて業務委託の人が常駐しているような企業も増えていますし、世界中の人とオンラインで会議するということも実施されていますよね。これからますますいつでもどこでも誰とでも働く社会になっていくと思います。

また、未来の話をすると、AIが人の仕事を奪うという議論がよく出てきます。実際に奪われている部分があることは事実ですが、AIによる失業者が増えているのかというと、必ずしもそうではありません。新しい仕事が生まれ続けているからです。今後大事になることは、何かスキルを磨くこと、環境に適応していくことだと思います。

ガクチカが本当に何もない学生が自身のアピールポイントを見つける方法

–変化に柔軟に対応できる力がこれからの未来を生きていく中で非常に重要だということがわかりました。そのような力をもっていながらも、うまく表現できなかったり、自身のアピールポイントを見つけられなかったりする学生が少なくありません。アピールポイントを見つけるコツはありますか?

ぜひカメラロールを見返してみてください。

今の学生さんたちは、すべてのログを写真で撮っていて、クラウドに溜めている方が多いのではないでしょうか?6、7年分の写真を全部もっているという方も少なくないと思います。

写真を見返していくと、実はなんでも無いようなことだけど大事な瞬間が思い出されると思います。

どうしてもアピールすることとして真っ先に上がるのは、サークルやゼミなどが多いと思います。一方で、実は片道1.5時間かけて通学した間で、ゼミで良い発言をするためにずっとウェブサイト見ていたことが、成功体験につながる大事な努力の過程だったりしますよね。成功体験だけでなく、そこに繋がった瞬間を思い返してみてほしいです。

加えてカメラロールを見返すことで、仲間を裏切らない、妥協しない、面白いことをしたいなど自分が大切にしていることも見えてくるのではないかと思います。

ガクチカの書き方とは?大手企業も評価するエントリーシートの内容を紹介

–選考過程で必要されることが多い、学生時代に力を入れたこと「ガクチカ 」ですが、本当のエピソードを書かないとやはりバレるものなのでしょうか?

嘘はバレます。私は採用担当も経験したことがありますが、頭の中では物理学に近い考え方をしています。例えば、「この人はこんなことをするとこんなことをする傾向にあるのか」や「この点とこの点を結ぶと人物像はこうだな」というような考え方をしています。だからこそ、学生が盛った話をしたりすると、「この人がこんなことをするとは思わないな」と感じ取れることが多いです。

さらに人間は今のことを考えている時と、過去のことを考えている時では表情や目が変わります。

スマホに例えると、今準備するのと、クラウドからデータ持ってくるでは動きが変わりますよね。本来クラウドに情報を読みにいくのに、それを取りに行かずにその場で考えていると動きが大きく変わります。人間でも同じことです。

加えて、本当の話ではない場合、細かいところを聞かれた時に詰まってしまいますよね。例えば、バスケサークルで勝ったという話をしていた場合、「相手のライバルってどんな選手だった?」と細かいところ聞くと、それが本当の話ではない場合、答えに詰まってしまう可能性がありますよね。

採用担当者は、その場で「嘘ついているね」と伝えるとハラスメントになってしまうのでお伝えできないですが、どう考えても嘘だよなという話はしっかりバレているということは覚えておいて欲しいです。

–ありのままの自分をしっかりとお伝えすることが大切なのですね。ガクチカを書く際に他の就活生と差別化を図るにはどうしたら良いのでしょうか?

差別化の図り方は簡単で、個人の体験を深く振り返るということが一番効果的であると思います。

エントリーシートや面接での言葉をブラッシュアップするためには、自分ツッコミが重要です。

要するに「それ普通だよね」と面接官に突っ込まれた時にどう答えるかを考えるということです。

例えば、居酒屋のアルバイトで、相手の目を見て接客をして、様子を見て次の一杯のおすすめをすることで売上をのばしたというエピソードを話したとしても、面接官からは「それ普通だよね」と思われてしまいます。しかし、そこで諦めるのではなく、当時を振り返って自分なりの工夫を探しましょう。単にその人の表情だけでなく、居酒屋の席の座組みを見るようにして、誰のための会なのかを把握してから、料理や飲み物のおすすめをしていたと言うエピソードがあれば、その人独自の体験になります。

体験の中で自分ならではのこだわりを掘り下げてみることや、データなどファクトと一緒に振り返ることが非常に重要です。さらに重要なことが、意味づけをすると言うことです。「私は頑張った」というのは、あくまでも個人の体験にすぎません。その経験が、周りに与えた影響や、世の中から見るとそのアクションがどれくらいオリジナルで価値のあるものなのかと言う視点で見ることが大切です。

キャリアの専門家が学生に送るメッセージ

–最後に学生へのメッセージをいただきたいです。

コロナ禍ではいろいろな不自由もあると思いますが、時代の変化に立ち向かえる、時代の変化を体感できるチャンスだと思ってください。

世の中が大きく変化する時代なので、先輩たちの時と事情が大きく違い、何を参考にしたら良いのかわからないと言うような問題もあると思います。一方で、それと同時に新しい面白いこともはじまっています。暗いニュースだけではなく明るいニュースもあります。今は飲食や旅行業界など困難な状況である業界もありますが、ワクチンが広く普及した未来には、そこにどんなビジネスが生まれるのかを考えていただきたいです。皆さんの手で、業界や世界を変えるようになってほしいです。

そして困っていたら一人で抱え込まないでください。大学の教職員も学生のメンタルやモチベーションを非常に気にかけています。みんな味方であると言うことを意識してもらいたいと思います。

ありがとうございました。学生の皆さんは是非、常見准教授の言葉を胸に、変化に柔軟に対応できる人になっていきましょう。

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2021年6月17日キャリア,コロナとガクチカ

編集担当者 k-sugata